「電波少年事件・鳩山由紀夫民主党前代表への感謝とお詫び」

 明治学院大学法学部では、毎年、著名な政治家を学園祭に招いて講演をお願いしている。最近三年間でも、谷垣禎一、石原伸晃、亀井静香と、政治のキーマンになる政治家をお招きして講演をお願いしており、2002年は11月3日に、鳩山由紀夫民主党民主党前代表に講演をお願いした。
政治講演会の詳しいことへのリンク)  私も担当者の一人として講演をずっと拝聴していた。鳩山一郎元首相の演説テープも含め、「個人の自立・尊厳」や「友愛」の思想がこれからの日本政治の中で占めるべき役割などについて、熱く語ってくださり、学生たちも、ふだんテレビの国会中継で映る鳩山前代表とは一味異なる語り口に、すっかり圧倒されていた。
講演が終わり、質疑応答となったが、そこでコーラス姿の女性が挙手し、鳩山代表を応援する歌を歌いたいと申し出て、20人ほどで鳩山代表を揶揄する歌を歌った。この一団は、「電波少年に毛が生えた」という番組のコーラス隊で、一部始終を撮影しているということは、そのとき学生スタッフから耳打ちされた。
ここで強調しておかなければならないことは、コーラス隊が、入り口で「電波少年ではないですか?」と制止した学生スタッフに対し、「一般人です」と身分を偽り、撮影目的を明かさずに入場したことである。抜き打ち的に奇妙なパフォーマンスを見せられ、唖然としていた私であったが、直ちに、聴講していた政治学科の女子学生から「質疑応答の時間に質問したくてたくさんの手が挙がっているのに、最後にこのような茶番を見せられて納得できない」との抗議があった。これは、明治学院大学として誇れる抗議であった。
鳩山代表も、大学に招かれ、講演しているという立場では「お客様」である。大学が制止できなかったからといって、無下にご自身で断ることもできず、その意味でも、大変ご迷惑をおかけしてしまった。
 その後、原強法学部長、西尾敦学長室長、私と学生スタッフ責任者は、番組プロデューサーを留めて、大学という場に身分を偽って侵入し、番組収録を行うのは適当ではないと抗議したが、その場では議論は平行線を辿った。
 しかし、その当日、講演会そのものを取材に来ていた他のテレビ局から、「大学は電波少年が来ていることを承知であんなことをやらせたのか」という問い合わせがあり、テレビ局側への了解を大学が与えて入場させていたのではないかという疑念も持たれていることが分かった。
 そこで、大学では、原強法学部長がテレビ局社長と担当プロデューサー宛に、11月6日付で謝罪と放映中止を求める抗議の内容証明文書を送付、対応を求めた。鳩山代表側も、党から11月5日付で、代表自身が揶揄されたことではなく、主催した大学・実行委員の学生の企画を台無しにする行為であるとして、抗議文を手渡した。
 取材にきたマスコミに対しては、11月5日付で、テレビ局として受付を通過した番組スタッフ以外のコーラス隊は、一般人として撮影意図を告げずに潜入したこと、テレビ局側に謝罪を求めることなどをFAXで知らせたが、その際、実行委員の学生が、取材にきたマスコミ以外(マスコミの社会部やスポーツ新聞等)にも同内容のFAXを送付し、マスコミに大きく取り上げられるところとなった。
 テレビ局側は、大学が送付した内容証明文書を受けて、編成局次長以下が11月8日に謝罪に訪れ、放映中止という良識的対応をとることで、事態の収拾が図られた。

 この間、「YAHOO!」ニュースのトップページにも、「電波少年事件」としてリンクが貼られ続け、一般紙・スポーツ紙入り乱れて、大きく報道された。
 だが、ここで、マスコミ側の大きな誤解を糾しておかなければならない。鳩山前代表側は、懸命に準備した大学・実行委員の企画を台無しにしたことに対して抗議したのであり、「実行委員の心をズタズタにした」と、土足で講演会企画の目的を踏みにじったことに抗議したのであって、自身が揶揄されたからとか、そういうことで抗議しているのではない。にもかかわらず、ニュース的には「鳩山・大学対電波少年」というような単純な図式で報道されたのはきわめて遺憾であり、それを受けて、「鳩山さんの対応も大人げない」というような批判をする評論家もいた。
 しかし、考えても見てほしい。鳩山前代表は、軽く受け流す対応もできたはずだが、大学という場に、一般人であると身分を偽れば、どんな企画でも妨害できるという先例を作れば、思想的事由による妨害すら可能となり、学問の自由にも抵触するのだ。公道など、公の空間での出来事とは違うのである。鳩山前代表は、大学で教鞭をおとりになっていたこともあるだけに、その危険性を十分知悉された上で、大学の対応を後押ししてくださったのである。
 その結果、鳩山前代表に対するマスコミの風当たりが一層強くなってしまったように感じる。その点でも、ご迷惑をおかけした鳩山前代表に、心よりお詫び申し上げたい。

 そして、鳩山前代表は、ご自身がそのような形でマスコミによる批判の矢面に立たされたにもかかわらず、実行委員の学生諸君の苦労を慮って、慰労の一席を設けてくださったのである。もちろん、マスコミには一切告げずにである。写真は、そのとき撮影した記念写真だ。  私は、そういう優しい心を持った鳩山前代表が、だからこそ代表職を辞さざるを得なかったことを残念に思うし、持ち前の「友愛」精神で、まだまだ活躍していっていただきたいと願っている。
 電波少年事件があったからこそ、私は鳩山前代表の素晴らしい側面を知ることができた。鳩山前代表が代表職を辞されたまさにその日、12月11日に、私は赤坂で鳩山前代表に、本当に偶然お会いし、「寺子屋」で一献傾けながら、心からの「ご苦労様でした」を申し上げることができたが、これも、神の思し召しとしか考えようのない邂逅であった。
 あらためて、鳩山前代表に、私たちの不手際をお詫び申し上げるとともに、感謝の念をもって、今後のご活躍を祈念したい。



↓懇親会後、鳩山代表を囲む政治講演会実行委員スタッフ;2002年11月15日↓
鳩山代表&スタッフ一同